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【第2部】 第36話 女のたたかい①

last update Last Updated: 2025-10-13 19:00:30

 ヘンリーと別れた私は、家へと続く道を一人歩いていた。

 もうすぐ家――そう思うと、自然と足取りも軽くなる。

 だって、早く龍に会いたいから。

 出かける前に送ったメッセージに、『了解しました』とだけ返事が来ていた。

 もしかしたら、心配しているかもしれない。

 だから、直接会って話したかった。

 前方に門が見えてきたところで、ふと足を止める。

 誰かいる。

 龍かと期待したが、違った。

 風に揺れる長い黒髪……凛とした、その立ち姿。

 その姿には見覚えがあった。

 相川果歩さん。

 彼女は私に気づくと、大きな瞳をまっすぐに向けてきた。

 視線が合い……なぜか胸がざわめく。

 果歩さんは、おしとやかな足取りでゆっくりとこちらへ歩いてくる。

 そして、目の前に立ち、じっと私を見つめた。

 うぅ、なんだか緊張する。

「あの、何か?」

 たどたどしく尋ねると、彼女の小さな唇が開いた。

 可愛らしい声がこぼれる。

「流華さん……二人きりで、お話したいのですが」

 その表情は真剣そのもの。

 瞳の奥には、何やら熱い感情が見え隠れしている。

 な、なんだろう。

 すごく、深刻そうだけど。

 これ、もしかしなくても、龍のこと……だよね?

「は、はい。じゃあ、近くの公園で」

 私の提案に、果歩さんは小さく頷き、美しく微笑んだ。

 か、可愛い!

 アイドル並みの可愛さに、少し儚さも相まって、守ってあげたくなる。

 ……って、私は何を考えてんだ!?

 自分で自分にツッコミを入れつつ、照れ隠しのように歩き出す。

 すると、果歩さんがそっと後ろからついてきた。

 公園に着く頃には、太陽がゆっくりと地平線に沈みかけていた。

 茜色の光が公園を染め上げ、

 いつもと違うその雰囲気に、妙な胸騒ぎを
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